HSP(ハイリ―センシティブパーソン)とは

Close-up dandelion seeds on black background.

HSP(ハイリーセンシティブパーソンとは?)

HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは、1996年にアメリカ心理学者であるエレイン・N・アーロン博士によって提唱された概念で、 音、光、匂い、人混み等生理的な刺激に対して敏感な気質を持ち、普通の人より強く反応する人のことをいいます。
別の言い方では「繊細な人」「過敏すぎる人」「空気を読みすぎる人」とも呼ばれます。
生物学的にも100種類以上の動物にも同じような気質がみられ、 音、光、匂い、人、感受性、人混み等の刺激に対して敏感で、 約20%(5人に1人)程度存在すると言われています。
これは、人種、年齢、性別関係なく、どの国でも一定割合でいることが確認されています。
シャイさ、社会不安障害、社会的抑制、社会的恐怖症、内向性などとHSPはしばしば混同されてきましたが、それらとは一線を画する性質のようです。

生物学的に言えば、危険を察知する感覚が他の人より強くて危機管理能力が高く、意識が外に向いて、頭の中で過剰な情報処理力がされていることが特徴です。そのため先の事を考え行動し、危険な状況に曝された時の対処能力が高く、頭の中の情報処理の仕方が複雑です。一方で、身体は過緊張状態で、物事を注意深く観察、洞察しているため分析能力に長けているといえます。

HSPの4つの特性DOSE(ダズ)

HSPには4つの特徴があり、かつ特徴が強いところがあります。
ただ受け取る刺激が強いだけでは該当せず、下記のうちすべて当てはまらないとHSPには該当しない定義があります。 一つでも当てはまらないとHSPには当てはまらないようです。

1.深く処理する(Depth of processing)
・・・感覚的な刺激を深く受け取り、思考が複雑で深く考えてから行動する「石橋を叩いて渡る」タイプです。哲学者のように洞察力、分析能力に優れるものの、慎重タイプなため行動を即座に移すことが苦手です。

2過剰に刺激を受けやすい(Over aroused)
・・・脳のフィルターが弱く、全ての刺激を受け取り、受け取る刺激が過剰であるので敏感で疲れやすい。

3.感情反応が強く、共感力が高い(Emotional reactivity and high empathy)
・・・人の考えや気持ちに振り回されやすく、強く共感してしまいますが、相手に付け込まれてしまうところがあります。そのため、相手に依存して、期待して、その期待を裏切られて、落ち込んでしまうことが多く、人間関係に失敗してしまうことがあります。

4.些細な刺激に対する感受性(Sensitivity to subtle stimuli)
・・・音や光、匂い、振動、人の気配、表情、感情といったあらゆる感覚がするどく、通常では知覚できないような刺激まで受け取ってしまいまうので、苦痛に感じていることがあります。

HSPの人は、感受性と共感力が高いため、その人がどういう人かエンパシーを感じる特徴があります。
内向的で、人と繋がるときには人を癒して、振る舞い、周囲に敏感に合わせることができます。
若い頃は、自分よりも相手のことを優先し、喜ばせようとするエネルギーを使いますが、善意で行ったことが人に利用されたり、自分が無くて好かれようと猫をかぶる自分に嫌になり、人間不信に陥ったり不運な運命を辿りがちですので、「No」といえる心がけも持てるようにしたいものです。

HSP(ハイリーセンシティブパーソン)の生い立ちと症状

HSPの人は20%の人が該当すると言われ、先天的なものとされています。ただし、遺伝子は後天的に環境に適応しようと変異するので、後天的にもなりえ実際識別するのは難しいともされています。
そのうち4%は特に強い感受性をもつ超HSPと呼ばれており、その多くは機能不全家庭で育った人が多いようにも思えます。
HSPの特性の一つとして、解離を伴っていることが多く解離性障害を伴うと思考が外面から内面にうつりやすく、自分との内面対話、イマジナリーフレンドをつくり一人で遊んでも寂しくないような状態になっていくため、1人でいても寂しくないため友達も不要といったソリタリー(2%)も含まれるようです。
解離はストレス環境に置かれると発症されやすいため、この特性を持った人の背景には、両親の夫婦喧嘩、アル中をもった親、ネグレクトといった機能不全家庭で育ち、PTSD、愛着障害、解離性障害といった幼少期のトラウマ、逆境体験、発達障害をもっていたなど、ストレス環境におかれていたことがほとんどです。
その結果として、過剰同調性(相手の反応や顔色を伺うことが習慣化して、自分を主張できなくなってしまう )におちいり、 他人に振り回され 自分という意思のない人生を送りがちになってしまう危険性も潜んでいます。

HSPの人は、体内・体外刺激を感じる大脳にある島皮質という部分の働きが活発であるため、あらゆる刺激に対して敏感に察知し、周囲に応えようとするあまり疲れやすい体質をもっています。
そのため、自律神経を乱し青年期から疲労感を抱え、規則的な生活をおくることが困難になって、社会にでてから一般の人とくらべると規則正しい生活をおくることに支障がでてくる場合もあります。

日常生活で、苦手な仕事、環境におかれると、ストレスや緊張が高まり、自律神経失調症となり症状が複雑化してきます。
ストレス環境が続く状態になると、身体の筋肉が凍りついて身体が硬くなり、交感神経が高まることで精神状態が不安定となり、しだいに強迫観念、全般性不安障害、うつ状態、PMS、産後うつを伴いやすくなります。
HSPは先を読んでから行動し、危険察知能力が高い特性をもっているのも、こういった未来への不安に対して考えすぎてしまうからと考えられます。

HSC(Highly Sensitive Child  ハイリー・センシティブ・チャイルド )

HSPの子供はHSC(ハイリー・センシティブ・チャイルド)と呼ばれており、親や大人に畏怖を覚え、嫌われないように過剰に奉仕し、良い子でいることで身を守ろうとします。
また、養育者が不安、強迫観念、過敏さをかかえていると、子供はそれをモデリングすることにより、感覚過敏になっている人もいると思われます。
HSCは先天的なものとも言われていますが、基本的には、 トラウマのメカニズムの支配下にあります。
良い事があったり、恵まれた環境であったりするとイキイキとし好ましい形で過ごしていけますが、悪い事、不遇な環境に置かれると極度に緊張し、人を細かく観察します。
そのため、入ってきた情報や感情を普通の人よりも感じとりますが、人が集まる場所においては、どう振る舞えばいいか考えすぎ、疲れ切るため生きづらくなります。
一方で、物事を深く掘り下げ、物事を深く分析するのが得意であるため、分析能力に優れた特性をもつようになるものと考えられます。
親に奉仕しても、親が期待に反する行為が多い場合は次第に親嫌いとなったり、最悪絶縁するパターンに繋がることもあります。
HSPタイプの人が、大人になって苦しんでいるのは、生まれつき身体が弱かったり、環境によって神経が繊細になる状況下におかれ、神経が研ぎ澄まされてしまった気質が形成されたことから生じています。
基本的にHSPの人は、純粋で正義感に富んだ奉仕精神をもっているのですが、社会という汚い世界にでると、傷つきやすかったり、人に利用され人間不信に陥りやすくなるため騙されないように注意する必要があります。(特に精神医療には注意

HSP(ハイリーセンシティブパーソン)の人の特徴

①周囲の音、光、匂いといった刺激に敏感です。
②過剰な刺激にさらされることが苦手なため、人口密度の高い都市型生活とか情報社会に疲れて、人の多いところが苦手です。
③過剰な刺激を受けやすいため、意識がぼーとしたり、頭の中で一人空想に耽ったり、危機的状況に落ちれば現実逃避しがちになってしまうこともあります。
④派手さはなく、シンプルなデザインのものを好み、無駄がなく、清潔感があります。
⑤自然の多いところが好きで、猫や犬など動物を扱うのが得意です。
⑥洞察力や分析力が鋭いので、哲学者や文学、研究者、芸術家などに多い傾向があります。


HSPとHSS型

HSPタイプでも、アクティブなHSS型HSPが約3割占めます。HSPの人は身体を過度に緊張させて、頭の中で考えるタイプで行動力は控えめです。一方、HSS型は、家の中などにいるのがじっとしているのが嫌な多動なタイプです。人見知りなどしながらも好奇心旺盛で、外に出たい、刺激が欲しいと、傷つきやすいメンタルを持ちながらも、チェレンジ精神に富んでいます。HSPがブレーキタイプならHSSはアクセル、HSS型HSPはブレーキとアクセルを踏んだイメージになります。

HSP(ハイリーセンシティブパーソン)と発達障害との違い

HSPと発達障害の人も感覚過敏なところがあり、類似した部分がありますが、性質的にHSPの場合は共感力が高く、その場の空気を読み取りすぎてしまいます。
そのため、交友関係も広く浅い付き合いから、狭いつきあいになっていく傾向にあるようです。
幼少期の頃は、社交的で友人関係に問題がなかったタイプでも、慢性ストレスを受けると解離性障害を受け、脳の島皮質と帯状回の働きが弱まることでASD的に類似した症状(グレーゾーン)がでてくることもあるようです。
一方で、発達障害タイプの人は、生まれたときから他者に共感するよりも自己中心的なところがあり、そのため「変わった子」としてみられ息苦しさを感じることが多いようです。
結果的にいじめられないように周囲に合わせようとする結果、感覚過敏となり、HSPと同じ様に過剰同調していくため、成長するごとにHSPと発達障害とは識別しにくくなるものと考えられます。

発達障害
人の表情から感情が読み取れない
冗談が通じない

先のことを読めない
トラブルをよくおこす

障害

認定基準がある

HSP
人の表情、声から察しすぎる
ユーモアは理解できる

先のことを考えすぎる
危険察知力が高い
気質

 認定基準はない

HSP(ハイリーセンシティブパーソン)と精神疾患との深い関係

HSP体質の人は感受性が強いため、緊張しやすく神経過敏な状態にあります。
そのため、不安、ストレスをかかえやすいので、自律神経が乱れやすく結果的に自律神経失調症、解離性障害を引き起し、疲れやすい、倦怠感、睡眠障害、さらにはうつ病、パニック障害を患いやすいようです。
また、カフェインなどにも敏感で、コーヒーやお茶を飲むだけでも体調がイライラする人もいます。
精神疾患にかからないようにするためにも、日頃からストレスを発散し、自律神経が乱れないように運動、瞑想、マインドフルネスなど実践しておくのも効果的です。


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